徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING 2002夏号 屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2002 夏号 掲載 / 2002年 7月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」のご購入と紹介はこちらです。



浄教寺・表門


浄教寺

優雅さと品格

浄教寺表門は、浄土宗寺院の正門として、どっしりとしたたたずまいの中に、優雅さと品格を兼ね備えた薬医門形式の門です。明治18年に移築された後、平成11年に淡路産の本葺き瓦で葺き替えられました。この屋根の見どころは、掛け瓦の納め方、経の巻(きょうのまき)鬼瓦を使用していること、甍と組棟の積み方、またその場合の捨て熨斗(のし)の入れ方などです。上品でありながら広がりのある屋根の葺き上がりは、古都の景観や文化を継承する上で、非常に大切な役割を果たしています。


掛け瓦の納め方

掛け瓦の勾配は、建物の大きさ・箕甲(みのこう)の落差・屋根の勾配・破風の種類( 反(そ)り・起(むく)り・直(ちょく)・照り起り )などにより決定します。掛巴瓦の本数が少ないのに、極端に勾配を変えたり、ぶら下がって見えたりしないように設計します。
また、掛巴瓦の長さも外観に大きな影響を及ぼします。格好よく仕上げるには、使用する平瓦の利き幅と掛巴瓦の見える部分の長さを合わせることです。また刀根丸(とねまる)瓦は掛巴瓦の勾配が強くなるにしたがって、若干外へ傾けると、破風側から見た感じが堅苦しくなく、大きくゆったりとした感じに見えます。きれいにつながった掛巴瓦は、屋根全体を引き締める役割を果たしています(写真1)。

写真1 掛巴瓦のつながり

経の巻鬼瓦

檜皮葺き屋根の例
経の巻鬼瓦はもともと獅子口鬼瓦と言いました。檜皮(ひわだ)葺き屋根や柿(こけら)葺き屋根の棟の端を飾るのが主であったと思われます(写真2)。熨斗瓦を四角く積み上げ、その中に熨斗瓦を少し前へ出しながら斜めに2段積んで飾り( 綾筋(あやすじ) )とし、その上に軒平瓦を2枚置き、軒丸瓦を3本もしくは5本乗せて、まわりを漆喰で塗り固めたのが始まりでした。檜皮や柿板は30〜40年で葺き替えられるので、漆喰でも保っていたのです。
その後、ひとつもので獅子口鬼瓦は作られるようになりました。中世の絵巻物にもその姿は描かれています。斜めの2本の線を綾筋と言いますが、古式のものほど勾配が急になっています。
現在では、上に乗せた軒巴瓦のことを経の巻と言い、その経の巻が前へ勾配をつけて張り出す形となりましたので、経の巻鬼瓦(写真3)と獅子口鬼瓦(写真4)を区別して呼んでいます。当初は、白く漆喰を塗っていたものですが、現在ではいぶし色のまま見せる場合も多くなりました。


写真3 経の巻鬼瓦の例

写真4 獅子口鬼瓦の例


甍の積み方

甍巴瓦の納まりと半組の輪違い瓦

簡略葺きの場合の甍と桟瓦のすき間の例

甍とは、大棟の下部に軒瓦を積む手法のことを言います。ちょうど、地葺きと大棟を連結させる部分であるため、とても大切なポイントとなります。バランスよく納めるには、甍巴と地葺きの素丸瓦の間が空かないようにしなければなりません(写真5)。
簡略葺きの場合には、簡略・本葺きのどちらの軒瓦も甍に使用する場合がありますが、この場合も桟瓦とのすき間をできるだけ空けないようにします。降棟(くだりむね)の下の土居丸(どいまる)瓦(素丸瓦)の上に甍の軒瓦の瓦当(がとう)が接するように施工すれば、桟瓦と甍は程よい間隔となります(写真6)。また甍の棟反りは、糸弛み(いとだるみ)線がもっとも美しく、経の巻鬼瓦の場合は、棟全長の200分の1くらいの反りが適当です。



京都は組棟の本場

菊丸瓦と輪違い瓦を組み合わせて積んだ棟を組棟と言います。京都の社寺や城郭・宮殿などでは随所に施工がなされていて、華やかで魅力的な雰囲気を出しています。
組棟を積む場合には、必ず菊丸瓦が下に、輪違い瓦が上になるように設計します。また、棟の段数が低い場合には、どちらかだけを使用することとなりますが、輪違い瓦のみを使用する場合は、少し大きめのものを使う方が、棟が映えて見えます(写真7・8)。
輪違い瓦は4段積んで、初めて外側の輪郭が円になります。ですから、4段でやっと一組積んだことになります(写真6)。浄教寺表門の場合では、2段積みであるため、半組で積まれているということになります(写真5)。
菊丸瓦も輪違い瓦も建物の大きさに比例して、大きくしたり小さくしたりしなければなりません。また、ひとつの屋根でも、大棟・降棟・隅棟と徐々に小さくしていきます。



輪違い瓦のみの例菊丸瓦のみの例


組棟の棟幅について

熨斗瓦を積み上げる場合と比べて、組棟の場合は、上下の熨斗瓦の幅があまり変わらないように設定します。そのため、冠瓦はできるだけ幅の広いものを使用します。また、雨仕舞いのことを考えると、菊丸瓦と輪違い瓦は熨斗瓦の前面より、3分〜5分中へ入れて施工する必要があります(図A)。

図A 組棟断面図 図A 組棟断面図


組棟の場合の捨ての入れ方

浄教寺表門では降棟に菊丸瓦を使用しています。そのために鬼際で反り増しをかける「捨て」には熨斗瓦を使用して、菊丸瓦の下に積んでいます。これとは別に輪違い瓦で「捨て」を入れる場合は、菊丸瓦を先に鬼際まで通して積んでしまい、その上に熨斗瓦を1段積んだあと、輪違い瓦の「捨て」を入れます(写真9)。
またこの場合は、輪違い瓦を「捨て」の終わりの方まで積んだと仮定し、その表面上に次の熨斗瓦の線を入れて、輪違い瓦をカットすると格好よく納まります。浄教寺表門では、熨斗勾配を変えながら捨て熨斗瓦を入れていて、きれいな放物線状の反り増しとなっています(写真10)。

菊丸瓦の上に輪違い瓦で捨てを入れる例 菊丸瓦の下に捨て熨斗瓦を入れている

デザイン力が素晴らしい

浄教寺表門は瓦を葺く一つ一つの手作業の他に、全体をまとめ上げるデザイン力が素晴らしく、本物を求めようとする気持ちが、見る人の心を打ちます。洗練された曲線の組み合わせと、光の当たる陰影により、とても見映えのする仕上がりとなっています。




浄教寺

浄土宗知恩院派多聞山燈籠堂浄教寺は、京都市中京区寺町通りにあります。平重盛の発願によって建立された東山燈籠堂が始まりで、平家物語や源平盛衰記には、当寺の縁起が載っています。その後、天正19年に豊臣秀吉によって行われた、洛中寺院の地所整理によって、多くの寺院と一緒に鴨川のほとりの現在の地に移されました。寺町通りの向かい側にはたくさんの仏具店が建ち並んで、盛況を呈したそうです。表門は、天明の大火で焼失しましたが、明治18年に旧華族山科家より移築されました。



※瓦施工は京都市東山区・有限会社山室瓦店様が手掛けられています。





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