徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING 2003秋号 屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2003 秋号 掲載 / 2003年10月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」のご購入と紹介はこちらです。



加茂神社・拝殿

加茂神社・拝殿
【加茂神社・拝殿】
加茂神社拝殿は、入母屋屋根の正面流れに千鳥破風を付け、さらに唐破風を設けた権現造りの様式をとっています(下・写真1)。棟飾りや屋根のいたるところに動植物をいくつも配置するなど、その多様な装飾が建物全体に動きを与え、豊後地方独特の風格と威厳をかもしだしています。この屋根の見どころは、唐破風に青海波唐破風を施していること・大棟の積み方・いろいろな役物瓦・阿吽と雌雄のある瓦などです。
凝った造りの屋根に大味な瓦を使用すると、重苦しい見映えになる場合があります。躍動感があり、洗練された仕上がりになるよう、繊細な気配りが必要となります。



青海波唐破風
青海波唐破風(写真2)は、大分市の北東部から佐賀関町を中心とした一帯に30余り現存する、この地域独特の唐破風の瓦の様式です。もともとここは神崎瓦の産地として、神崎・細・馬場・坂ノ市のあたりで多くの瓦が製造されていました。神崎瓦の始まりは、慶長5年(1600)に早吸日女神社(佐賀関町)社殿を再興するため、当時の領主であった肥後熊本藩主加藤清正が、伊予宇和島より二宮雲水という瓦師を招き、神崎の猪野谷に釜を築かせたのが初めと伝えられています。
権現造り
青海波唐破風
大波・小波・蛇腹・鱗丸で一組
拝み部分が前へ出ている
この二宮姓の瓦師によって、青海波唐破風は生まれました。唐破風の照り起くりに合 わせて、掛け瓦の部分に、波がうねり渦を巻く『大波』と『小波』を配置し、その上に『蛇腹』と呼ばれる波が押し寄せてくる様子とも、龍の腹の形とも思わせる突起を付 けた瓦を乗せ、その上の刀根丸瓦には、鱗で全体をおおった『鱗丸』を使用しています(写真3)。この青海波の名前の由来は、海の波をあらわした模様という意味からきているようです。加茂神社拝殿の唐破風は軒に対して直角ではなく、拝みのところで前へ出てきています。このため、蛇腹は軒先で幅を狭く、拝みへいくほど広く作成してあります(写真4)。また鱗丸は袖丸型には作っていないため、その下を抱き丸工法(写真2)で納めています。


大棟の積み方
大棟大棟は、簡略の軒瓦を利用した甍を、土居丸瓦の上に乗せ、台熨斗瓦と肌熨斗瓦を積んだ後に、割り熨斗瓦の間に大小を組み合わせた青海波を、4段積んでいます(写真5)。向拝・千鳥破風が凝ったデザインであるのに対し、青海波の大棟はすっきりとしたデザインで、屋根全体をスマ−トで上品に見せています。全体の棟の反りもゆるくおおらかで、どっしりとしたたたずまいを見せています。


いろいろな役物瓦
いろいろな役物瓦
いろいろな役物瓦
いろいろな役物瓦
いろいろな役物瓦
加茂神社拝殿には、動物と植物の模様や形をあしらった役物瓦が、ずいぶんと使われています。大棟には、棟込み紋として五七の桐を組み入れ、両端に鯱を乗せています。また経の巻鬼瓦には鬼台を据え、それには菊水の模様を入れるとともに、その下の拝み巴瓦には牡丹の花をかたどったものを使用しています。
千鳥破風の棟にも同じように五七の桐を青海波のまん中に入れ、経の巻鬼瓦の上には翼を広げた鳳凰を乗せています。また拝み巴瓦には天狗をあしらっていて、誇らしげに天を仰いでいます。
青海波唐破風には、龍が一対で宝の珠を目指して泳いでおり、その上の鬼瓦にも龍の姿を描いています。鬼瓦の上にも龍がいて、参拝に来る人をにらむように顔をのぞかせています。
向拝掛け瓦の隅巴瓦の上には、虎の巴蓋瓦を乗せ、丸瓦の終わりには獅子を飾っています。また千鳥破風の巴蓋瓦はウサギとなっています。
このようないろいろな役物瓦は、加茂神社だけではなく、青海波唐破風の神社や寺院のほとんどの屋根に、数多く使用されています。神崎瓦の瓦職人が考案し、瓦を作り、競って葺き上げたなごりが代々と受け継がれてきたのです。正面から中央を見上げると宝の珠・鱗・龍が2匹・天狗・桐・鳳凰と一直線に並んで、一種独特の雰囲気を出しています。全体の数を数えてみると、龍4・獅子2・ウサギ2・虎2・鳳凰1・天狗1・桐17・牡丹2・天狗1・菊水6となっています(写真6・7)。


瓦の阿吽と雌雄
阿吽とは、仏教では息の出入りのこととされています。動物をかたどった瓦を作る場 合、口の開いているものと閉じているものを、一対として作る場合が多く、口の開いている方を『阿』、閉じている方を『吽』として、左右を対称に配置して施工します。加茂神社拝殿でも鯱・獅子・虎・龍の4種類の阿吽が見られます(写真7)。また動物には雌雄があり、口の開いていている方を雌、閉じている方を雄として、表情や大きさを変えて作られています。


虎・鯱・獅子・龍の阿吽
虎

鯱

獅子 龍




簡略葺き、本葺き掛け瓦の場合の拝み部分断面図
簡略葺き、本葺き掛け瓦の場合の拝み部分断面図
簡略葺き、本葺き掛け瓦の場合の拝み部分断面図


加茂神社
別府湾を背にした大分市細地区にある加茂神社は、元和9年(1623)に創建されました。社殿棟札に「山城国賀茂大明神之勧請也・・・・」とあり、京都下賀茂神社の分霊を祀っています。現在の社殿は昭和4年に再建されました。拝殿は、平成12年に淡路産いぶし瓦を使用し、役物瓦は大半を焼き直して、再使用しながら葺き替えられています。

参考文献: 「瓦風土記 大分県における青海波唐破風 −大分の技・神崎瓦−」
佐賀関町文化財研究会  生野 盛 著  
瓦施工 / 大分県大分市細 河野平瓦工場
瓦施工 / 甍技塾徳舛瓦店 有限会社



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