徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING 2003夏号 屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2003 夏号 掲載 / 2003年10月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」のご購入と紹介はこちらです。



明光寺・鐘楼

明光寺・鐘楼
【明光寺・鐘楼】
明光寺鐘楼は、正面・側面とも一間の四本の柱の上に、入り母屋屋根をのせた四本柱形式でできています。隅棟を振れ隅として、小さくまとまりながらも屋根全体を大きく見せるとともに、軒の反らせ方や冠瓦を素丸瓦にしているなど、建物全体に軽快な印象を受けます。この屋根の見どころは、瓦の大きさ・素丸瓦の寸法・鬼瓦による棟の強弱・熨斗瓦の形状・目地積み・大棟の反らせ方などです。
小さい屋根をバランスよく納めるためには、最初のデザインとデッサンがとても大切です。無理のない自然な曲線の組み合わせを作る工夫が必要となります。



屋根に対する瓦の大きさ
瓦の大きさは、屋根の大きさに比例して使い分けます。大きな屋根ほど大きい瓦を、小さい屋根には、それに合わせて小さい瓦を使用します。かつては、9寸幅の平瓦を江戸物と呼んで、大きさの基本としていました。江戸物より1寸小さい8寸幅を中江戸、1寸大きい1尺幅を一寸物、それより大きいものを二寸物、3寸物と呼んでいます(注1)。明光寺鐘楼の場合は、軒の長さが4.6 m四方、面積21.6u(6.5 坪)の大きさであるため、8寸幅の平瓦を使用しています。大きな屋根では、興福寺南円堂の平瓦が1尺2寸幅、現在修復工事の行われている本願寺御影堂4,900 u(1,485 坪)では1尺3寸となっています。

注1
平瓦の長さは幅に対して通常1寸長くこしらえてあり、1尺幅の平瓦の長さが1尺1寸なので、この1尺を省き一寸物と呼んだ。


素丸瓦の幅寸法
平瓦と素丸瓦の幅がおなじに見える例本瓦葺きの場合、平瓦と素丸瓦の幅寸法の見え方によって、重厚な印象を受けたり、軽い感じを受けたりします。一番バランスよく映るのは、平瓦の幅と素丸瓦の幅が同じ大きさに見えるときです(写真1)。実際には屋根を下から見た場合、両方の寸法が同じであると、目の錯覚によって、平瓦の方が素丸瓦より広く見えてしまいます。これを修正するには、平瓦の割り付け寸法に対して、素丸瓦の幅寸法を55%にする必要があります。明光寺鐘楼では8寸幅に対して、4寸5分幅の素丸瓦を使用しています。


鬼瓦による強弱の付け方
左はひとつものの鬼面鬼瓦、右は足付きの鬼面鬼瓦の例鬼瓦の種類での強弱の付け方は、屋根全体の印象に大きく影響を及ぼします。顔の張り出している鬼面鬼瓦を使用する場合は、できるだけ屋根に勢いをつける必要があるため、獅子口鬼瓦を使用する場合と比べて、捨て熨斗瓦を一段多く入れたり、大棟の台熨斗瓦をより強く反らせたり、鳥衾瓦を使用したりと、少し躍動感のある線の出し方をしなくてはなりません。
また、鬼瓦の形状によっても反りの強弱を変ます。鬼瓦の中には、拝み巴瓦の上に据えるひとつものの鬼瓦と、刀根丸瓦の上に据える足付きのものとがあります(写真2)。明光寺鐘楼のように、ひとつものの鬼面鬼瓦の場合は、足付きの鬼面鬼瓦の場合よりも、反りを強く設定します。


熨斗瓦の形状
熨斗瓦の形状熨斗瓦には、厚みの厚いものと薄いものとがあります。また焼成時のねじれによって、真っ直ぐのものだけではなく、反ったりむくったりしています。社寺建築の場合は、棟を反らせたり、勢いを出したり、鬼際で反り増しをかけたりするなど、曲線の組み合わせや熨斗瓦の勾配、目地などによって、工夫をしながら施工する必要があります。この場合、熨斗瓦のねじれは、真っ直ぐやむくったものよりは、反っているものが好ましいと言えます(図A)。特に隅棟や降り棟の捨て熨斗瓦を入れる部分には、大きく反った熨斗瓦を使わないと、流れるような美しい線が出にくく、折れ曲がった無理のあるものとなってしまいます(写真3)。
反り熨斗瓦を使用した隅棟熨斗瓦の厚みについては、厚いものより薄いものの方が、線のつながりを通しやすく、熨斗瓦の勾配を変えて積んでも、表面の厚みが薄いため、太陽光線が当たった時のムラが出にくくなります。また、陰影の強弱を利用しやすく、鬼面鬼瓦の場合は勢いを強く仕上げるため、反りのある薄い熨斗瓦を使用する方が好ましいと言えます。


目地積み
熨斗瓦の積み方には地域性があり、目地を付けて積む(注2)場合と目地を付けずに積む場合とがあります(写真4)。目地を付けて積んだ場合は、熨斗瓦を積む南蛮漆喰がいつも乾燥するという利点があります。また、反り増しを掛ける場合にも、全体にすき間を空けているので、鬼際での線の作り方がやりやすくなります(写真5)。

隅棟の例目地積みの大棟

注2
熨斗瓦の上下の間にすき間を空けて積む方法。


小さい建物の大棟の反らせ方
門や鐘楼、手水屋など小さな建物の大棟は、一目で全体のバランスがわかるため、よく計画を立てて望む必要があります。初めに、軒反りや破風の掛け方、鬼瓦の種類、屋根の勾配などの種々の要素によって、台熨斗瓦と肌熨斗瓦の反りを決定します(写真6)。それから、大棟の両端の4分の1づつに、放物線状に反り増しをかけます(写真7)。その場合、真ん中の全体の2分の1については、棟の厚みは同じにしておきます。
また、台熨斗瓦と肌熨斗瓦が、地葺き部分と大棟を連結する役目を担います。屋根の見映えにとっては、全体に影響を及ぼす非常に重要なポイントとなります。台熨斗瓦と肌熨斗瓦は、軒反り・棟の長さ・屋根の勾配・鬼瓦の種類などにより、棟の反りを決めて、糸弛み線で積みます。その際、熨斗瓦の勾配が少しでも違えば、そこのところだけがやせて見えます。もっとも熟練された技能の発揮される施工個所の一つです。言い換えれば、この部分がうまく葺かれていれば、他のどの部分を見ても、奇麗な納まりとなっていることでしょう。
台熨斗瓦と肌熨斗瓦の反り 大棟の反り増し


大棟断面
大棟断面
大棟断面
大棟断面
大棟断面


明光寺
明光寺は、新幹線新尾道駅北西の山麓に位置する真言宗醍醐派の末寺です。平安時代の草創伝えられ、度重なる戦禍で焼失しましたが、永禄12年(1570)に宥遍和尚によって『普門山無量寿院平之坊明光寺』と号して現在地に中興されました。
境内は、古刹の風情を今に伝える享保年間建立の本堂と山門の昭和大改修に引き続き、平成10年には難陀龍王の天井画を附した木香漂う持仏堂が再建され、古代鬼面をのせた優美な屋根が陽光に輝いて、景観を新たにしています。
第二次大戦時に供出された鐘楼の梵鐘には、元禄12年(1699)化主吉和村城坂、治主岸本七郎右衛門などの名があり、往時の観音信仰の広さが伺えます。

瓦施工 / 甍技塾徳舛瓦店 有限会社


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