徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING 2003夏号 屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2003 春号 掲載 / 2003年4月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」のご購入と紹介はこちらです。



大慶寺・本堂

明光寺・鐘楼
【大慶寺・本堂】
大慶寺本堂は、間口、奥行とも十間(18m)四面であり、入り母屋屋根の正面流れに千鳥破風を取り付け、さらに向拝を軒唐破風としています(下・写真1)。社殿様式の権現作りの拝殿部分の形式を模していて、優美さの中にも荘厳な雰囲気をかもしだしています。この屋根の見どころは、唐破風のデザインと施工上のポイント、左桟瓦を使用していること、瓦当紋の見え方、谷部分に谷瓦を使用していること、いろいろな役物瓦などです。気を抜かず丁寧に葺かれている点や、良いと思うことを随所に発揮しているところなど、屋根全体を通して素晴らしい魅力的な仕上がりとなっています。



唐破風のデザイン
大慶寺本堂の向拝部分は、軒唐破風となっており、流れ方向の野地のラインが照り起くりになっています。この形は破風板と野地の高さに大きな落差ができます。この落差を補うには、袖丸瓦を使用して形を整えなければなりません。大慶寺本堂の場合は、袖丸瓦を二列使用し、一列目の袖丸瓦の垂れ寸法を大きく取らずに、強弱のメリハリを付けながら、二列目で後ろ側の野地のラインと合わせています。


唐破風の施工上のポイント
写真1写真2
唐破風を施工する上での大切なポイントは、掛け巴瓦の間隔を揃えることと、刀根丸(写真1)に使用する袖丸瓦の背中のラインを、破風の形とあまり変えないことです(写真2)。掛け巴瓦の間隔は、瓦座の位置で均等に割り付けをすると、谷部分では狭く、また肩の部分では広くなってしまします。これを改善するには、掛け巴瓦の瓦当の中心の高さで、均等に割り付けをする必要があります。また、上品で優雅な感じに見せるために、刀根丸の拝み部分の袖丸瓦には、大きな垂れのものを使用せず、鬼瓦は一列目ではなく二列目の袖丸瓦の上に据えます。また、肩の部分は素丸瓦を使用して、すっきりと見せます。


左桟瓦を使用している
図A桟瓦は、江戸時代に近江大津の瓦工「西村半兵衛」が、本葺き瓦を改良し、軽くて少ない費用で葺ける瓦として、延宝2年(1674)に考案しました。形状は片方に桟が付いており、片方はその下へ差し込む形となっています。そのため、桟瓦が差し込み側へ傾くと、雨水が侵入します。一般的には、向かって左側に桟の付いている桟瓦(右桟瓦)が多く葺かれていますが、地域によっては左側に桟の付いている桟瓦(左桟瓦)ばかり使われているところもあります(図A)。
右桟瓦・左桟瓦棟方向に勾配の付いている屋根に桟瓦を葺きますと、桟の方へ傾く場合は大丈夫なのですが、差し込み側へ傾いた場合には、雨水が侵入して雨漏りを起こします。この場合、右流れ・左流れで右桟瓦・左桟瓦を使い分けることとなります。大慶寺本堂の軒唐破風は棟方向に勾配があり、向かって右側は右桟瓦(写真3)を、左側は左桟瓦(写真4)を使っています。また、一定方向から強風を受けるような地域では、雨水が侵入したり、桟瓦が風で飛ばされたりしないように、片面には左桟瓦、その反対側には右桟瓦を使用しているというところもあります。


瓦当紋を垂直に施工している
同じ形状が3ケ所以上ある紋の例
上下の区別がある紋の例紋には、形状によって上下のはっきりしているものと、そうでないものとがあります。紋を回転させた時に、同形状になるところが3か所以上ある場合(図B)は、気にする必要がないのですが、上下の区別があるような紋の場合(図C)には、勾配のあるところに施工した場合、下から見た時に傾いて見えることになります。大慶寺本堂の瓦当紋は、日蓮宗の宗旨紋である「井桁橘」を使用しており、上下が付いています。この場合、勾配のあるところに施工する掛け巴瓦には、番号順に角度を付けて紋を取り付けたものを使用し、下から見た時に瓦当紋が垂直となるように設定します。


谷部分に谷瓦を使用している
谷部分には、板金の上に谷瓦を施工する場合があります。本葺き型の幅の広い平瓦(写真5)を使用することが多いのですが、大慶寺本堂では、桟瓦を二列に並べる(写真6)という、とても斬新で見映えの良いデザインで施工されています。瓦の陰影をうまく調和させていると言えるでしょう。
平瓦の谷瓦の例 桟瓦の谷瓦


いろいろな役物瓦
松の留め蓋瓦写真7
桟瓦葺き(簡略瓦葺き)の場合、向拝刀根丸の上部は丸瓦が途中で終わるようになります。この部分にはくるみ桟瓦(写真8)もしくは留め蓋瓦を使用します。大慶寺本堂では、松を施した留め蓋瓦を使用して意匠的に見せています。本堂の前に植わっている天然記念物の松を模したものです。
角角鬼瓦写真9
数珠掛け鬼瓦の一種で、遠州鬼瓦独特のものです。数珠の外側輪郭の上部が角ばっているので角角鬼瓦と命名されました。
獅子巴蓋瓦写真10
右側の口の開いている方(阿)は、上向いてじゃれており、左側の口の閉じている方(吽)は、頭を低くして身構えている素振りを見せています。作者の遊び心が感じられます。
宝珠巴蓋瓦写真11
宝珠とは願い事が何でも叶えられる神秘的な宝物で、軒唐破風の両端に飾られています。
棟込紋瓦写真12
大棟の両面に三つづつ井桁橘の宗旨紋を取り付けています。
隅木蓋瓦写真13
隅木の上に取りつけられた瓦です。角角鬼瓦の形を模しています。

松の留め蓋
瓦くるみ桟瓦
角角鬼瓦
獅子巴蓋瓦 宝珠巴蓋
棟込紋瓦
隅木蓋瓦


唐破風陸棟断面
唐破風陸棟断面
唐破風陸棟断面


大慶寺
静岡県藤枝市の市役所西側にある圓妙山大慶寺は、江戸時代には「さむらい寺」と称せられ、田中藩武士の大半の菩提所として、田中城祈願寺でありました。本堂の前には、日蓮聖人が建長5年(1253)の京都比叡山へ遊学の折、立ち寄られた時に、記念にお手植えになられた一本の松「久遠の松(天然記念物)」が、見事な枝を張っています。現在の本堂は、昭和2年に完成したものです。

瓦屋根施工 / (有)塚本屋根工事(静岡県袋井市)


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