徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2005 秋号 掲載 / 2005年10月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

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西方寺 本堂

西方寺 本堂

【西方寺】
 三重県松阪市郷津町に所在する西方寺は、天長元年(824)、現在の地に建立されました。8度目の再建となる本堂は、以前と同じく寄棟(よせむね)屋根に向拝(ごはい)を設け、大棟には新しく鴟尾(しび)がのせられました。この本堂の見所は、鴟尾の特徴と納まり、大棟の反らせ方、振れ隅屋根であることなどです。空へ羽ばたくような両翼の軒反りに加え、大棟の反りに合わせて緩やかに傾斜した二つの鴟尾が、境内に荘厳な雰囲気を創り出しています。

鴟尾の誕生
写真1 鴟尾の納まり西方寺本堂の屋根には、大棟の両端に鴟尾が上がっています。さて、そもそもこの鴟尾とは何をかたどったものなのでしょうか。棟の端を高く積み上げることにより強調して強く反らせることは、古代からも行われていました。水平な軒先は両端が垂れ下がって見えるのと同じように、大棟も建物が大きくなるにつれて、水平な棟は力強さに欠けて見えるためです。これが、鴟尾誕生に向けての原動力であったと思われます。中国の後漢の時代には、大棟の両端を高くした棟飾りを「反羽(はんう)」とよんでおり、反り上がった羽という意識があったと考えられています。発掘された奈良時代の鴟尾には、鳥の羽根を連想させる図柄も多く見られます。また、鰭(ひれ)の部分は鴟尾の生まれる以前の、棟端で熨斗瓦を高く積み上げた名残であると思われます。西方寺では、唐招提寺金堂の鴟尾を手本に、頂部で鰭が途切れる初唐様式を模して作られました。


鴟尾の納め方
寄棟屋根に鴟尾をのせる場合、まず始めに、隅棟と大棟の熨斗瓦を同じ段数で持ちまわりながら積み上げます。鴟尾は、そのあとの接点の上に納めることになります(写真1)。したがって大棟の高さは、隅棟の熨斗瓦の段数と鴟尾の頭部の寸法とで決まります。また、鴟尾の大きさを決める目安は、その下に積まれる割り熨斗瓦の段数と、鴟尾の頭部の寸法内で積むことができる割り熨斗瓦の段数との比率をどのようにするかで考えます。両方の段数が同程度となるのが理想的です(図イ)。 小平(こひら)面の鴟尾下側の柄振(えぶ)り台輪は、丸肌(割っていない熨斗瓦)の熨斗瓦を積み上げた後に、隅棟と同じように冠瓦を持ちまわって納めます。この柄振り台輪の形状では、冠瓦の幅と鴟尾の幅とを同寸法とすることによって安定感が出てきます。また、積み上げた熨斗瓦の輪郭も逆台形にすると、すっきりとした見映えとなります(写真2)
写真ア 鴟尾納まり図
写真ア 鴟尾納まり図

鴟尾の各部名称 写真2 柄振り台輪の納まり


鴟尾以外の納め方
写真3 柄振り鬼瓦納めの例寄棟屋根における大棟と隅棟の接点の納め方には、鴟尾をのせる他にもいくつかの方法があります。建物の様式や歴史、大きさ、使用目的などによって、どの方法にするかを決めるとよいでしょう。写真3は柄振り鬼瓦納め、写真4は鳥衾(とりふすま)瓦納め、写真5は留め納めです。柄振り鬼瓦で納める場合は、厚みの薄い、横幅の広くない鬼瓦が似合います。鳥衾瓦納めの場合は、大棟を高く積むことができないため(隅棟の段数より1〜2段多く積めるくらい)、高く積みたい場合は柄振り鬼瓦納めにする方がよいでしょう。留め納めの場合は民家に多く見られ、すっきりとした感じに映ります。どの方法を採用しても、それぞれが屋根全体の意匠を決める大きなポイントとなります。
写真4 鳥衾納めの例 写真5 留め納めの例


大棟の反り
大棟の反りは、台熨斗瓦のところで、棟全長の100分の1くらいの寸法を中央で下げるように設定し、棟端(むねはし)の反り増しを、中央の割り熨斗瓦の総高さの2割程度にします(写真6)。寄棟屋根では、隅棟と大棟の接点で、隅棟の熨斗瓦が斜めに立ち上がってくるため、両方の熨斗瓦どうしをあわせて持ちまわると、大棟の方を徐々に高く納めなければならなくなります。そのため、自然と程よい反り増しをつくることができるようになります。また、それにあわせて鴟尾も少し中央へ傾斜します。
写真6 大棟と鴟尾


振れ隅屋根
写真7 振れ隅(小平面の方が平面より匂配が強い)振れ隅とは、隅棟が真隅(45度)方向に向いておらず、左右どちらかへ振れている屋根のことをいいます。寄棟屋根の場合は、隅棟が小平面に振れており、とくに桁行き・梁行き方向がともに同寸法の御堂に大棟を取り付ける場合は、小平面の屋根勾配が平(ひら)面よりも強くなります(写真7)。この場合、隅巴瓦は真隅の方向に向けて施工しますが、隅鬼瓦は隅棟と直角に取り付けるため、真隅の方向を向きません。そのままの状態を下から眺めますと、隅巴瓦と隅鬼瓦の方向が合わず、不体裁に見えます。

違和感なく見えるようにするには、隅鬼瓦を真隅線と振れ隅線の中間くらいの角度と直角になるように矯正するとよいでしょう。西方寺本堂では、稚児鬼瓦と二の鬼瓦の二種類の隅鬼瓦があるため、稚児鬼瓦を矯正して角度を変え、二の鬼瓦は振れ隅線と直角になるように納めています(図ウ)
写真ウ 振れ隅



西方寺
JR・近鉄松阪駅の東約1.5kmのところに建つ、天台真盛宗江津山安養院西方寺は、天長元年(824)弘法大師空海上人の開基と伝えられています。天暦年間(947〜956)には、当時しばらく滞在された空也上人によって、九品浄土を表わす9本の松が植えられました。その後、延徳の頃(1488〜1491)に圓戒国師慈摂大師真盛上人が訪れ、天台宗に改宗しています。境内の整備は平成15年の本堂と唐破風玄関の再建から始まり、平成17年には閻魔堂と観音堂がそれぞれ再建、改修されました。

瓦施工 / 甍技塾 徳舛瓦店 有限会社



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