徳舛瓦店 甍技塾 瓦葺きの魅力

瓦葺きの魅力

屋根と屋根材 ROOF & ROOFING 2005新春号 屋根と屋根材 ROOF & ROOFING
2005 新春号 掲載 / 2005年1月15日発行

建築・設計と屋根を結ぶ情報誌「屋根と屋根材 ROOF & ROOFING」(日本屋根経済新聞社 年4回発刊)に掲載している「瓦葺きの魅力」をご紹介します。

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大中寺 山門


大中寺 山門
【大中寺】
大中寺の山門は、屋根の大きさが幅5.5m、流れ2.7mの8寸5分幅の本葺き瓦を使用した、薬医門形式の山門です。山裾の参道を登りきるととたんに境内が開け、その入り口に建つ堂々としたたたずまいは、参詣する人々の心を和ませてくれます。この山門の見所は、経の巻鬼瓦の形状と大きさ、拝巴瓦の高さ、降棟の捨て熨斗(のし)瓦の入れ方、切隅瓦と巴蓋(ともえぶた)瓦、袖塀の納まりなどです。大棟に菊丸瓦を入れ、経の巻鬼瓦に白く塗料を塗るなど、本葺き瓦の重厚さの中に、優美さと繊細さが兼ね備わって、全体に躍動感があり荘厳な雰囲気を漂わせています。

経の巻鬼瓦の大きさ
写真1 大棟と降棟の高さの釣り合い小さい建物の鬼瓦の大きさは、屋根全体の見映えに大きく影響します。鬼瓦の大きさは、大まかに決めるのではなく、棟の段数から割り出すのがバランスよく納める一番よい方法です。降棟のある切妻屋根の場合は、最初に降棟の段数と捨て熨斗瓦の段数を決定し、降棟鬼瓦の大きさを決めます。そして、その後に大棟の段数と鬼瓦の大きさを決めます。大棟と降棟の高さの釣り合いは、降棟の冠瓦が大棟に接したところより、大棟の熨斗瓦が一段上に残っているのが理想です(写真1)

写真2 甍を積まない場合の大棟の熨斗瓦の段数(唐頭の下)甍を積まない場合の大棟の熨斗瓦は、おおよそ台熨斗(だいのし)瓦・肌熨斗(はだのし)瓦と割り熨斗瓦の一段分が、おおよその場合、鬼瓦の足元の高さ(唐頭(からと)の下端)でまかなえるようになります(写真2)。大中寺山門は、降棟鬼瓦が1尺1寸5分、大棟鬼瓦が1尺3寸7分の高さとなっています。


経の巻の勾配
経の巻鬼瓦は獅子口(ししぐち)鬼瓦と違い、経の巻部分の背中のラインを、棟の反り増しに合わせて作る必要があります。棟のきれいな放物線状のラインは棟端で鬼瓦につながることによって、流れるような広がりが演出されます。また反り増しの大きさは、大棟はゆったりとおおらかにし、降棟は捨て熨斗瓦を入れながら勢いと厚みを持たせるようにします。そのため経の巻の背中の勾配は、大棟鬼瓦よりも降棟鬼瓦のほうが強くなるのが理想です(写真3)。大中寺山門の大棟の反りは、台熨斗瓦を糸弛(いとだる)みで1寸反らせるとともに、鬼際で1寸放物線状に棟の厚みを増していて、全体では合計2寸の反り増しになっています。

写真3 降棟 経の巻の勾配


拝巴瓦の高さ
写真4 拝巴瓦の高さ掛瓦の一番上に納まる拝巴(おがみどもえ)瓦は、屋根全体のバランスをとる上でとても重要な役割を果たしています。拝巴瓦の位置によって大棟の鬼瓦の高さが決まるとともに、大棟の棟反りも決まることとなります。
 また、左右からつながる掛巴瓦の瓦当(がとう)の曲線は、破風の一番上に納まる拝巴瓦によってひとつにまとまります。勢いがあり安定感する拝巴瓦の高さは、写真4のように掛巴瓦の瓦当の上端線に、拝巴瓦の上部を合わすことによって生まれます。屋根全体の設計をするのに最初に必要なのが、拝巴瓦の高さと言えるでしょう。


降棟の捨て熨斗瓦の入れ方
写真5 降棟の捨て熨斗瓦経の巻鬼瓦を使用した場合の捨て熨斗瓦の入れ方は、少しおとなしいラインにする必要があります。大中寺山門では一段目を一枚、二段目を二枚半の長さにしながら、二段目の後方も少し隙間を残して緩やかな放物線を描いています。捨て熨斗瓦は便宜上一枚でカットして納めていますが、実際には3枚くらいの薄く削いだ熨斗瓦が入っているつもりの方がよいでしょう(写真5)。また、降棟の熨斗瓦の段数が奇数の場合(捨て熨斗瓦は除く)は、台熨斗瓦を半枚から積み始め、捨て熨斗瓦を半目違いとして、最終の捨て熨斗瓦と台熨斗瓦の目を合わせます。この時、一段目の捨て熨斗瓦の勾配をきつくしておき、二段目以降はゆるくしておかないと、きれいなラインにはなりません。肌熨斗瓦のチリを1寸〜1寸5分程度つける場合は、捨て熨斗瓦の下のところでも同じチリ幅にするときれいに仕上がります。
大棟納まり図
大棟納まり図
大棟納まり図
大棟納まり図


切隅瓦の形状と跳ね上げ
写真6 切隅瓦の跳ね上げ切隅(きりずみ)瓦の大きさは、掛(かけ)瓦の長さと等しくなるように作製します。そのため、切隅瓦は唐草軒瓦の幅よりも2割程度大きくなります。この場合切隅瓦の谷の深さを、唐草軒瓦の谷の深さのままにして、幅だけを広げて作ってしまうと、間延びをした感じで、納めるときも尻の部分が低くなってしまい、隅先を持ち上げて葺くことができません。切隅瓦を格好のよい形状で仕上げるには、唐草軒瓦の垂れの丸みをそのまま延長させて作るのが望ましいと言えます。切隅瓦の跳ね上げ(写真6)は、隅巴瓦の高さを保つために必要であるとともに、軒先の美観にも重要な役割を果たしています。軒反りに合わせて設計する大棟の棟反りにも影響を及ぼすため、瓦座を高くして持ち上げるなど、工夫を要するところです。

巴蓋瓦の納まり
お椀を反対に向けた形の丸みのある巴蓋瓦は、シンプルながらワンポイントとしての目を引く存在感があります。そんな巴蓋瓦も納まる位置と高さによっては、見映えが大きく変わってきます。真上から見たときに、掛巴瓦・隅巴瓦・軒巴瓦の3本の中央上に正しく納まっていないと、不安定な感じとなってよくありません。軒巴瓦の胴体と巴蓋瓦の側面同じ位置に来ることも大切です。また浮いて見えることのないよう、すべての下端が隙間なく合わされていることも重要です(写真7)

袖塀の納まり
写真7 巴甍瓦(お椀型)の納まり
写真8 袖塀の数珠掛け鬼瓦
大中寺山門の袖塀は、巴付き軒瓦(簡略瓦)が一枚づつ表裏に葺かれ、その上に少し反っている薄い熨斗瓦を2段積み、素丸瓦を伏せて納めています。鬼瓦は全体の比率から、横幅の広くない(足の付いていない)すっきりとした数珠掛け鬼瓦を採用しています(写真8)。また、袖塀は門の両端に位置するため、門柱にあたるところに柄振板(えぶりいた)と呼ばれる板材が入り、瓦の小口を隠しています。この場合、巴付き軒瓦の瓦当を半分に切って柄振板にあてると、左右対称に納まってすっきりと見えます(写真9)
降棟納まり図 写真9 袖塀の柄振板の納まり
降棟納まり図
降棟納まり図



大中寺
西巖山大中寺は、神戸市北区の山間ののどかな地域にある臨済宗妙心寺派の寺院です。近くを神戸電鉄粟生線が通り、すぐそばに藍那駅があります。このあたりは、阪神淡路大震災のときにもほとんど災害を受けないところでした。平成12年から境内全域が整備され、本堂は銅板葺きに、山門と庫裏は瓦葺きで新しく建て替えられました。

瓦施工 / 京都市右京区太秦 岩橋瓦店
瓦施工 / 甍技塾 徳舛瓦店 有限会社



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